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炎症性腸疾患

炎症性腸疾患とは

口から肛門まで食事が通る管状の臓器を消化管と言います。この中で特に小腸と大腸を中心に炎症を生じる病態のことを広義の炎症性腸疾患と呼びます。感染性腸炎はその代表的な疾患ですが、虚血性腸炎や薬剤性腸炎、放射線性腸炎などもこの中に含まれます。狭義の炎症性腸疾患とは潰瘍性大腸炎とクローン病の二つを指しています。いずれも原因不明の疾患ですが、患者数は年々増加しており2015年の報告では潰瘍性大腸炎は約17万人、クローン病は約4万人を数えています。いずれも10歳代から20歳代での発病が多い疾患ですが高齢になってからの発病もみられています。男女比をみると、潰瘍性大腸炎では差はなくクローン病では2:1と男性に多くみられます。潰瘍性大腸炎とクローン病の原因はよく分かっていません。素因(病気になりやすい体質)と環境(食餌などの外的要素)の関与が考えられており今後の研究による解明が期待されるところです。潰瘍性大腸炎とクローン病の治療法はこの10年余りの間にどんどん進歩し治療に対する考え方も変わってきています。潰瘍性大腸炎とクローン病は難病として扱われていることや治癒という概念がないことから“治らない病気”として誤解されるところもありますが、病気を正しく理解して治療を受けることでほとんど制限のない生活を送ることができます。

炎症性腸疾患の診断と治療

炎症性腸疾患の診断

  • 問診
  • 身体所見
  • 血液検査
  • 便検査(培養検査、寄生虫学的検査、潜血検査)
  • レントゲン検査(単純撮影、造影検査、CT検査)
  • MRI検査
  • 腹部超音波検査
  • 内視鏡検査(上部消化管、小腸、下部消化管)
  • 病理学的検査

*上記を組み合わせて診断を行います。これらは経過をみていく上でも大切になります。

炎症性腸疾患の治療

潰瘍性大腸炎とクローン病での治療法には共通したものが多くみられます。活動期(炎症が強く病状が落ち着かない時期)と寛解期(炎症が治まり病状が安定している時期)に分けて治療を組み立てることが大切です。治療の目標は、症状の改善だけでなく粘膜治癒の状態(腸管粘膜の炎症が消失した状態)にもっていくことが重要と考えられるようになりました。しっかりと炎症をコントロールすることにより、再燃する可能性が減るだけでなく長期経過例で心配される発癌の危険性も低くなると考えられています。一生、薬を服用し続けなければいけないという決まりはありません。ただ、安易な休薬によって病状が再燃し重症化することも少なくないため注意が必要です。

1. 5ASA製剤(サラゾピリン、ペンタサ、アサコール、リアルダなど):

治療の基本薬になります。寛解導入効果もありますが寛解維持薬として重要で、長期に服用しても副作用がほとんどない薬剤です。病状によっては坐剤や注腸剤を使用します。

2. ステロイド:

強い抗炎症作用があり比較的速やかな寛解導入が期待されます。ただ、長期使用では副作用を無視できないため寛解維持での使用は避けるべき薬剤です。

3. チオプリン製剤(アザニン/イムラン、ロイケリン):

免疫調節剤の一つです。ステロイド依存性から離脱することを目的に使用されることが多い薬剤です。骨髄抑制、肝障害や胃腸障害、脱毛が出現することがあります。

4. タクロリムス製剤(プログラフなど):

免疫調節剤の一つで潰瘍性大腸炎の治療に用います。強い抗炎症作用があり比較的速やかな寛解導入が期待されます。腎障害や糖尿病の悪化がみられることがあります。

5.抗TNFα抗体製剤(レミケード、ヒュミラなど):

強い抗炎症作用があり比較的速やかな寛解導入が期待されます。寛解導入した後で寛解維持にも使用することができます。B型肝炎、結核の合併に注意が必要です。投与中の生ワクチン接種(麻疹、風疹、ムンプス、BCGなど)は出来ません。

6. 血球成分除去療法:

詳しい機序は分かっていませんが抹消血液中の白血球を除去することで腸管の炎症を押さえることができます。除去といっても骨髄から直ぐに新しい白血球が誘導されるため抵抗力が下がる心配はありません。治療の効果発現には時間がかかりますが薬物治療ではないため副作用はほとんどありません。

7. 栄養療法(エレンタールなど):

クローン病治療に用います。脂肪を含まないアミノ酸製剤で、食事の代わりとして使用することで腸管の安静を図るだけでなく抗炎症効果も期待できます。栄養剤のため副作用の心配はありません。

8. その他:

抗菌剤や整腸剤を併用します。

当院での炎症性腸疾患の治療方針

  • コミュニケーションを大切にした専門医による診療を行います。
  • 生涯に渡るQOL(生活の質)の向上を目指して治療を行います。
  • 最新の治療法の中から一人一人にあった最適なものを選び提供していきます。

*ライフスタイルに合わせ平日午後や土曜日午前の診察も行います(予約が必要です・土曜日初診不可・土曜日検査不可)。

生活上の注意

妊娠・授乳について

潰瘍性大腸炎、クローン病のお母さんに奇形などの異常妊娠が多くみられるということはありません。ただし、活動期に妊娠すると流産や早産などのリスクが増加するため寛解期での計画的な妊娠が望まれます。潰瘍性大腸炎、クローン病に使われる治療薬のほとんどは妊娠への影響が軽微と考えられています。妊娠中に治療を中断すると母体の病状が悪化して胎児に悪い影響がおよぶこともあるため、最近では治療を中断することなく出産するケースが増えてきています。授乳に関しても、潰瘍性大腸炎、クローン病で使われる治療薬が影響することはないと考えられていますので制限する必要はありません。

風邪薬・鎮痛剤の使用について

短期間の使用であれば併用して構いません。ただし、鎮痛剤を長期に連用すると病状が悪化することがあるので注意が必要です。

インフルエンザ予防接種について

不活化ワクチンであり接種自体に問題はありません。炎症性腸疾患治療中の抗体陽転率についてはいろいろな意見がありますが定説はありません。インフルエンザ罹患後に病状が再燃することもあるため積極的な接種をお勧めしています。

潰瘍性大腸炎

直腸から大腸の口側に向かって連続性、びまん性に炎症が広がる慢性の病気で、粘液便、血便、下痢の症状が多くみられます。病態が悪化すれば腹痛、発熱も生じます。口内炎、関節症状、皮膚症状などの腸管外合併症を認めることも少なくありません。炎症は粘膜・粘膜下層を中心とした腸管の浅層に生じますが、時に穿孔や狭窄を合併するほどの高度の炎症が生じることもあります。炎症の広がる範囲によって、直腸炎型、左側大腸炎型、全大腸炎型に分類されます。また、発病経過から、初回発作型、再燃寛解型、慢性持続型に分類され、多くは再燃寛解型の経過をたどります。

潰瘍性大腸炎の治療

軽症・中等症例

5ASA製剤が基本薬になります。病状程度や改善具合をみながらステロイドや血球成分除去療法を併用していきます。再燃寛解を繰り返す症例ではチオプリン製剤を併用していきます。チオプリン製剤による副作用出現例や無効例では抗TNFα抗体製剤による寛解導入・維持を試みています。

重症例

入院での治療が必要な病態で絶食下に治療を行います。ステロイド強力静注療法のほか、タクロリムス製剤や抗TNFα抗体製剤を用いた寛解導入を行います。

外科的手術

治療法は進歩していますがどの治療を行ってもよくならない難治で重症の症例では手術が必要になります。

生活上の注意

活動期には食物繊維の少ない食事を心がけて下さい。また、飲酒を控え、体に負担をかけない生活を心がけましょう。寛解期には、内服治療を継続する以外は制限のない生活が送れます。

クローン病

消化管のどこにでも炎症や潰瘍が生じます。中でも小腸と大腸は病変が生じやすい臓器のため、小腸型、小腸大腸型、大腸型の大きく三つに分類されています。血便よりも下痢、腹痛の症状が多くみられます。そのため、検査で病変をみつけにくい小腸型では心因性の状態と誤解されることもあり注意が必要です。体重減少や発熱症状が出現することもあります。肛門病変を伴うことが多く、痔瘻などの難治性肛門疾患をきっかけに診断されることも少なくありません。また、口内炎、関節症状、皮膚症状などの腸管外合併症を認めることもあります。炎症は腸管の全層におよぶため深い潰瘍を生じることがあり、治療が不十分なときには高度の瘢痕狭窄や穿孔のために外科的手術が必要になることがあります。ただ、手術で完治する病気ではないため複数回の手術を受けられている患者さんも少なくありません。できるだけ手術を受けなくて済むようにしっかりとした治療を継続していくことが大切です。

生活上の注意

動物性、植物性にかかわらず脂肪摂取量が多いと病状が悪化してしまいます。また、狭窄が存在すると通過障害を生じやすくなるため食物繊維の少ない食事を心がけることも大切です(低脂肪低残渣食)。ファーストフードは出来るだけ摂取しないようにしましょう。また、喫煙は明らかな増悪因子となるため必ず禁煙して下さい。

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