難治性腹水とは
お腹の中には、通常20~50ml程度の少量の腹水があり、腹膜で産生、吸収され一定量に調整されています。しかし、腹水が原因で、お腹の張りが強くなり、思い通りに食事ができなくなることがあります。食事が十分に食べれない状況が続くと、栄養状態が悪化くなり、体力が低下し、ひいては免疫力の低下につながります。
そのままに放っておくと低栄養やがんの進行から、さらに腹水が貯留するという悪循環に陥るため、いくつかの治療が試みられています。これらの治療でコントロールができない腹水を難治性腹水と言います。
腹水の原因
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炎症が原因の腹水
お腹の中で炎症が起こり、血管内の成分が溢れだした腹水でたんぱく成分を多く含みます。代表的な原因は「がん性腹膜炎」です。
→ 胃がん、大腸がん、膵臓がん、卵巣がんなどのがん性腹膜炎 -
炎症以外に原因がある腹水
血管内にある水分が血管外に漏れだした腹水で、たんぱく成分が少ないという特徴があります。主な原因は、次のようなものがあります。
→ 肝硬変 、腎不全・ネフローゼ症候群、心不全 など
腹水の治療法
腹水の一般的な治療法には、水分制限、利尿剤、ステロイド、抗がん剤治療などがありますが、これらの治療でコントロールができない腹水を難治性腹水と言います。難治性腹水の治療として、腹腔穿刺を行い腹水を抜く治療法がありますが、デメリットとして腹水中のアルブミンをはじめとするタンパク質などが喪失されるため、栄養低下が進行しさらに腹水が溜まりやすい状況になります。難治性腹水の治療の難しい点は、できるだけタンパク質などの喪失を防ぎながら水分だけを除水しなければいけないということにあります。
腹水の治療方法
- 食事療法 水分・塩分制限
- 投薬
- 腹腔穿刺
- 腹水ろ過濃縮再静注療法(CART:Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy)
・利尿剤
・ステロイド
・抗がん剤
腹水ろ過濃縮再静注療法(CART:Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy)とは
腹水ろ過濃縮再静注療法(CART:Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy)は、腹水を穿刺排液を行いますが、その抜いた腹水を再利用して体内に戻すという治療法です。CARTでは、腹水を抜いてがん細胞や細菌などを取り除き、アルブミンなどの有用なタンパク成分を特殊な体外循環ろ過装置を回収して、濃縮後に点滴で血管内に戻します。しかし、この治療法の問題点として、腹水の回収や濃縮に時間がかかることや点滴後にアレルギー反応などにより発熱やショック状態になることが報告されており、有効性の面から限られた施設で行われています。
広島記念病院における腹水治療
広島記念病院では、難治性腹水でお困りの患者さんを一人でも減らすことが出来るように、平成29年4月より腹水治療センターを開設しました。開設に先立って、KM-CARTの開発者である松崎圭祐先生にご講演(平成28年12月2日)いただき、また、要町病院での院内研修を行いました。腹水がなくなることにより、食欲が回復したり、痛みの緩和が得られたり、また、呼吸が楽になったり極端に低下した生活の質(Quality of life; QOL)が劇的に回復される患者さんも経験しております。腹水治療は、緩和治療の一つとしても有効で、腹部の膨満感が解消され食欲が改善するなどQOLの回復が期待できるため、がん化学療法を再開し、予後の延長も期待できると考えています。
お問い合わせ先
腹水治療センター TEL 082-292-1271(代表)
受付時間:水・金曜日 14:00~16:00
担当医師:外科 坂下 吉弘
外来医師担当表
※お急ぎの場合は、診療日以外でも診察いたしますので、お電話でお問い合わせください。
受付時間 | 診察室 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
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14:00 ~16:00 | 1診 | 坂下 吉弘 | 坂下 吉弘 |